【観国之光 283】コロナ疲れ、慣れ 怖がりすぎず、油断せず 本社論説委員 内井高弘


新型コロナウイルスによる自粛ムードの一方で、3連休半ばの21日、鳥取砂丘(鳥取市)は多くの人でにぎわった

 新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えない。最近では「オーバーシュート」(爆発的患者急増)や「ロックダウン」(都市封鎖)といった言葉も出てきて、不安に拍車をかける。

 ロックダウンは東京都の小池百合子知事が3月23日の会見で述べたもので、新型コロナの大規模な感染拡大が認められた場合はロックダウンもあり得るとして、都民に対し、大型イベントの自粛などを改めて求めた。

 東京では24日に新たに17人の感染が確認された。この数字は都による1日の感染者数としては最も多く、小池知事が危惧するのも仕方がない。

 その一方で、「コロナ疲れ」や「コロナ慣れ」「コロナうつ」といった言葉も生まれている。ウイルスを抑え込むことが大事だと分かっていても、いつまでこんな生活が続くのかとストレスがたまり、疲れてしまう。毎日のように報道されるコロナ関連ニュースに慣れてしまう…。

 テレビの情報番組では「自粛疲れ? 桜満開の3連休 各地で大行列」と題して、多くの人が東京の中目黒や新宿御苑、京都の嵐山などで花見や散歩を楽しみ、混雑している風景を流した。

 コロナウイルスを恐れなくなり、普通に外出してしまうケースは、特に若者世代を中心に今後増えそうだ。居酒屋で飲んでいた20代とおぼしき4人のグループは「(コロナを)いつまでも気にしていても暮らせない。経済を回しに来た」と話していた。「我慢の限界にきているのかな。少しずつ人が戻りつつある」と居酒屋の店長。

 人が出掛けることで成り立っているのが観光業界だ。現状、「旅行に行こう」とはなかなか言えないが、工夫を凝らして集客に努めるしかない。

 岐阜長良川温泉旅館協同組合(岐阜市)は4月上旬まで、同市の家族連れを対象に、日帰りの「ファミリー応援!長良川のほとりでお食事プラン」を提供する。子ども向け体験プログラムを付け、実施する場合は屋外で少人数で行い、食事場所には空気清浄機を設けて感染リスクを抑えるという。

 栃木県那須塩原市の温泉旅館では500円で日帰り温泉を楽しむことができるサービスを始めている。

 とはいえ、業界の努力だけではこの事態を打開するのは困難だ。政府は23日、感染拡大に伴う経済対策の策定に向け、観光業や運輸業の関係者からヒアリングを行った。この声を生かし、大胆な経済対策を講じてほしい。

 観光立国を推し進める政府には業界を後押しする責任がある。

 国民もまた、怖がりすぎず、油断せず、コロナと相対する心構えが必要だ。


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